丸山議員の問題発言

 

すでにメディア等で論じられているように、政治家ともあろう人が、「戦争によって領土を奪還する」という趣旨の発言をするのはあまりにも軽率な発言であると断定せざるを得ない。現在平和条約締結に向けた日露交渉が行われている中、北方領土問題は非常にナイーブなものとなってる。故にロシア側からも、丸山議員の発言が問題視されている。

私もこうしたメディア等の批判に基本的には首肯する。その一方で、丸山議員の肩を持つ意見を述べる論客は全くと言っていいほど見受けられない。そこで今回は丸山議員の発言の真意を探ってみたい。

丸山議員は当該発言を受けて記者会見を開いたが、その席で、「あくまで一般論として」述べたとしている。その「一般論」とは、推測するに、これまで領土を戦争行為あるいは圧倒的な軍事力を背景とした恫喝以外で取り返したことはないという歴史的事実のことを指している。ましてや、二国間交渉によって領土を取り返した事例はほとんどない。その少ない事例の一つに中国・ロシア領土問題がある。

この時は2004年に、ロシアが実効支配していた一部領土を中国へ引き渡す形で合意に至った。しかし、両国は以前に国境紛争を起こしており、一時は核戦争目前とまで言われたほど、軍事的には対立していた。つまり、領土問題を解消しないことには、中露間での戦争の可能性すら否定できないものであったのである。

無論、ロシアからすれば、軍事大国である中国は脅威であり、敵対することに利はない。故に、ロシアは一定の譲歩をしてでも、この問題を解決したかったのである。

その一方でロシアからみた日本はどうであろうか。確かに、日本はGDP世界3位の経済大国である。国内の経済状況のよろしくないロシアからすれば、日本と経済関係を結ぶことは魅力的である。だが、その一方で軍事的脅威は、ほとんどないに等しい。すなわち、ロシアに対して脅威を与えることは出来ていないのである。つまり、ロシアにとって北方領土を返還することは、中国の時とは異なり、脅威に晒されてのものではないのであり、そこに領土交渉の困難さがあるのだ。

こうした状況を打開する方法として、戦争が選択肢の一つとして存在していることは確かである。それを、彼は「一般論」と表現したのであろう。

 いずれにしても、職業としての政治家がそのようなことを述べてよいはずがない。丸山議員には責任を償っていただきたい。